「星くずの片隅で」を観たことと、まだ少し「あの頃」にいる自分のこと。

「星くずの片隅で」と、いう映画を観た。


舞台は香港。主人公は、清掃業。

そして、時代は「コロナ禍」。(2020年頃)


冒頭、防護服を着て、消毒するシーン。

その映像で、一瞬で、私は、泣いてしまった。


そこにはまぎれもない「あの頃」が、あったから。


映画全編に描かれる、あの頃、の、様子。

街から人はいなくなり、お店は閉まっていき、マスクの奪い合いが起こり・・・

人びとは、混乱していた。


今まで当たり前に出来たことが出来なくなって、世界が激動していた2020年からの数年間。

映画の主題に「コロナ禍」自体はそこまで重要なものじゃないとは思うのだけど、

当時の様子を「思い出す」には十分で。

だから、のっけから、泣いてしまった。


映画を観て、感想を、ちゃんと書こう、と思ったのは。

その「あの頃」のことを「なかったこと」にされてはたまらん、のだ、という自分の中の感情を少し吐き出したくなったから。


2023年8月の、いま。

なんだか、世の中は「すっかり元通り」になっているように見える。

それが、悪いことだとは、まったく思わない。

「あの頃」は異常だった。しんどくて、きつい、状況に置かれた人がたくさん、いた。

なので、いま、世の中が「正常モード」になっていることを、私とて、もちろん嬉しく思っている。


でも「すっかりまったく元通り」じゃないのよ、いや、正確には「元通りになれない人もいるのよ」と、いう記録を、吐き出しておこうと思った。


(自分自身の話なんで、、あれなんですけど・・・)

私は、いまだに、大勢の人が集まる飲食の場に、行けない。断ってしまう。

人がたくさんいる場所に行くときに「マスク」を外すことが出来ない。


約3年の間、毎日毎日、

「飲食の場はリスクが高いです」「人との接触を避けてください」

「重症化したり後遺症が残るケースも少ないです。甘く見ないでください」と、

警鐘を鳴らす仕事を、し続けた。

ほんとに朝から、晩まで。

忙しいときは、朝起きて、8時にパソコンに向かい、トイレと食事以外はずっとメールを打ち続け、気がついたら0時になっている、みたいなときもあった。

それで、お風呂に入り、布団に直行し、朝起きて、またパソコンに向かう。

ずっと、警鐘を、鳴らした。

「周囲に感染を広げないようリスクを慎重に対応してください」

幸い、命を落とす人は自分も周りにはいなかったけど、毎日、何百人も罹患者やその周囲の人とやり取りを続けていれば、重症化したり後遺症にかかる人も当然いるので、

「怖い病気だなあ」という感情が、少しずつ、自分の中に蓄積していった。


その結果、しみついてしまった、私の「非常事態」モードの思考回路は、まだ、元には戻らない。

私自身が、ある意味、精神的な「コロナ後遺症」にかかってしまった。


きっと「元通り」な生活を送っている人からしたら、

「いまだにそんなこと気にしてるの?」なんだろうな、と、

こんな自分をもどかしく思うことも、ある。

飲み会のお誘いを断るときは、本当に申し訳ないし・・・


けど、それが、いまの、私。

元通りに、なれてない、私。

ふう。


今、不幸なのかというと、まったく、そんなことはなく、

仕事はあるし、趣味も謳歌しているし、人間関係もすこぶる良好だし、

日々、とても幸せに暮らしている。

ずっと「あの頃」のまま、ってわけでもなく、少人数なら飲みにも行くようにもなっているし、外出することも増えている。


けど「あの時代」は確かにあった。

皆が未知のものに怯え、疑心暗鬼になり、すっとんきょうなこともたくさんあって、

ぎすぎすぴりぴりしていた、あの頃。

その時代と地続きな時代に、生きている人も、まだ、いる。

それはきっと「私だけ」ではないはずだ・・・(自分がそんな”唯一”、な人間であるはずがない・・)

そう思って、書きました。


ネガティブなことを表したい、わけではなく。

冒頭だけでなく、他にも泣いてしまうシーンがいくつもあったこの映画で。

どんな状況にあっても、たくましく、誠実に生きよう、とあらためて思うことが出来て。

(いや、まあ、自分は弱いので、凹んだり、色々あるんだと思うけど・・・)

とても良い映画を観た!!という、感想としても、書きたかった。


シンプルに、「ちゃんと生きたい」と思える、素敵な映画でした。


映画「星くずの片隅で」


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