[読書感想文]「幸せの国」にも当然幸せじゃないことはある。「ブータン:日本」は「地方:東京」『ブータン、これでいいのだ』。

どんな場所も「パラダイス」ではなくて、良いところ・そうでないところ・好き嫌い・・・「好み」があると思う。


たまたま図書館の「新刊」コーナーにあって、なにげなく手に取ってみた文庫本。

なかなかに当たり。面白かった。

言わずと知れた(?)GNH(”Gross National Happiness")で有名な国、ブータン。

「幸福の総量」を国家の目標と掲げていて、2008年に国王自らが民主化を実現した国。

テレビなんかで「幸せそうな」国民の笑顔だったり仲睦まじい若い国王夫婦の映像なんかは見たことがある。


この本は、国王フェロー第1号としてブータンの政府組織(GNHコミッション)で1年働いた筆者が「ブータン」について書いた本。

どんなところが「幸せ」でどんな人に合う国なんだろう・・・。


いきなりブータン関係ない感想だけど、著者の経歴が面白い。

”震災以降”というレッテルはあまり好きではないのだけど、

こういう「単線」(大企業に入って、そのまま偉くなる1本道ルート)ではない

「複線」キャリアを辿る超高学歴層が目立って来ているような・・というのは気のせいなのかどうなのか。

筆者は「ブータン」をベンチャー企業になぞらえている。

ブータンの人口は約70万人。日本で言うと、島根県か、東京都大田区、練馬区と同じくらいです。日本の人口を約1億3000万人とすると、185倍の差があります。まさに、20人規模の企業と約4000人規模の企業くらいの違いです。
『日本はブータンに比べてこんなことができてないから、幸せじゃないんだ!』というような議論が起こったとしても、あまりそれは生産的ではありません。


そう。ひとことで「国」といっても置かれている状況はそれぞれで、比較して「どっちが良い悪い」ではない。

前例が何もないので一つずつ考えていかざるをえないベンチャーで働くのが好きか、仕組みがある程度整っている大企業で働くのが好きか・・・は人それぞれ。

・・・まじか。

会議も時間は予め決まっていなくて「みんなが揃っているな、と思ったら声をかけて始める」のが通常なんだそう。

自分のペースを組み立てたいので、わたしだったらきついな~それ、と思ったのは

日本のやり方になじみ切ってしまっているからなのかな~。

でも「ブータンっていい国だよね~それに比べて日本は・・・」と一度でも思ったことのある人は、

そういう「先のことは先のこと~わかんない~」なスタンスを許せる度量があるか、

自省してみるのも良いかもしれない。

ベンチャーと大企業へのなぞらえ以上に、二拠点を夢とするわたし自身が

読んでいて強く感じたのは、「”ブータンと先進国(日本含む)”の構造は”ローカルと首都圏”と全く同じだな」ということ。

外から来た観光客が求める「豊かな自然」は、中のブータン人にとっては「当たり前」のことであって、

それをアピールするという発想はもともとなかった・・というエピソードも

「仏像? そんなん見て何が面白いん? 暇なん?」と言い放った実家(奈良)の母と同じや・・・。


もう一つの観点としては「それでも”中の人”だって便利さを享受したい」ことがブータンの都市でも表れているということ。

「快楽主義」のブータン人の特徴ゆえに、ローンで高級車買っちゃったりしてるらしい。

民主化の波が当然あって・・「何を変えて、何を変えずに残していくかのバランス」を考えて進めていかなくてはいけない・・・のは、こと、国内に置いても ”地方”が見えている景色と酷似しているように感じた。

問題の無い夢の国、なんてものは当然存在しないわけで・・・

ブータンにも当然、課題は山ほどあるだろうとは思う。

それでも「幸福を追求する国」ということが

彼らの誇りに繋がっているし、笑顔で生きられるゆえんなんだろう。

 

誇りなんて・・気の持ちようだから、日本人も自国を誇れるといいな。


筆者に当時の上司が話してくれたという言葉。 

『なんでも”どうにかできる”と思ってはいけないよ。それは、人間の過信というものだ。人間なんて大きな大きな自然の中の、ほんのちっぽけな存在でしかない。しかも、そのちっぽけな人間社会の歴史の長さに比べたら、僕たちが生きているのなんて、ほんの一瞬なんだ。最初から、なんでもどうにかできるとは思ってはいけない』


『そもそも僕たちができることなんて、限られているんだ。だから、自分にできることを、等身大でがんばればいい。できることを、すればいい。僕たちの国王はいつもこう言っているんだ。”小さくても、”できることをすればいい。最初は小さな動きでも、いいものは、波紋のようにどんどん広がっていくんだよ”ってね。だから、自分がどうにかできることにフォーカスするんだ、それ以外のことについて、課題をみつけて嘆いたりしていても、仕方がないんだよ。自分の身の丈を超えて、生真面目に思い悩み過ぎてはだめだ。』

ブータンにも色々あるとは思うけど、この考え方は取り入れたい、そうしたらきっと生きるのが少し楽になるかな、と思った。

★「住み方」「働き方」それぞれ

ブータンという国そのものもそうだし・・・、海外(途上国)で働くことの憧れがある人は読んでみてもいいかも。

わたし自身は積極的に国外に住みたいとは思ってないし、会社を辞めたいとも思っていないけど、海外での有期の仕事に飛び込む、という選択肢も世の中にはあるんだな、ということがべあらためて知れて勉強になった。

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