「関係人口」はメジャーで花を咲かせるか

「ソトコト」の特集テーマが「関係人口」。

ここ最近・・・体感的にはこの3か月くらい、その単語を目にする機会が増えたように思う。

うーん、これは単に私がそういうコミュニティの情報に晒される機会が多くなっただけなのかどうなのか。

でも、確実に「界隈」(←どこの?はあるけど)では「流行ってるなあ」という感じがする。


「関係人口」。

「観光以上、移住未満」と書いてある。

二拠点を目指す自分としては、そういう概念が浸透してくれることは大歓迎。

ローカルに興味を持つ人が増えてくれることも嬉しい。


・・・なんだけど。

なぜか、雑誌を読んだときに「これからの時代は関係人口~♪」と無邪気にもろ手を挙げて喜ぶ、とは別の気持ちが生まれた。

そこはかとない違和感、と言える何かがひっかかった。


 まあ、なんとなく理由はわかっていたけども、

 どこかで見かけたtweetで「やっぱりそうだよな」と思った。

  「みんながみんな笑顔」なイメージに違和感を感じるのだ。

 「ローカルに関わればみんなハッピー💛」という空気感。

 まるでゼクシィのようなキラキラ感。

 ・・・結婚はハッピーエンドではなくて、長い道のりのスタートなだけだから!(違)


 たしかに地域には、都会と違う個性があり、それを「面白さ」と見ることはできる。

 けれど、地方の個人商店の娘、という役割もある自分から見ると、

 「地方って、わりと課題山積みなとこもありまっせ。日々、めんどくさいことも理不尽なこともいっぱいですしな。

  そういうどろどろしたとこにもちゃんと向き合ってもらわんと困りますわ」

 と、おばちゃん、小言の一つも言いたくなるというか。


 そういう違和感もあって、あらためてソトコト編集長が書いた本を読み返してみた。

 『ぼくらは地方で幸せを見つける』指出一正(ポプラ新書)


 ※ちなみにこの本の結びでは、「これからの地域を盛り上げていく3つの感覚」の一つとして「関係人口を増やす」とある。

  発刊が2016年の12月なので、約1年後、満を持して特集になった・・・のか。


 本を読んで、もやもや解消のヒントは見つかった。


P183 
 真剣なテーマを少しずらした角度から取り組む、というのはじつは僕が常々『ソトコト』を編集するうえで意識しているこだわりでもあります。
(略)誰しも、自分ごとであれば真剣に考えますが、多くの人にとっては他人ごとだからです。その他人ごとを、どうすれば自分ごとに引き寄せられるか。そこに編集者としての力量が試されます。
(略)社会課題を扱うときに、こうした問題に関心が高い人たちには伝わりやすいのですが、僕たち編集者の目標は、関心のない人にこそ読んでもらい、知ってもらうこと。
 そのためには、いかに「やわらかく、軽く、面白く、オシャレ」に、つまりライトにつくるかが大事なのです。


 要は、複雑な課題があることなど百も承知で、

 それでも興味関心を持ってもらえるように、できるだけ間口を広げるために

 誌面をハッピーオーラで溢れさせているのだ、と。

 それが編集の役割なんだ、と。


 そう言われてしまうと納得せざるを得ない・・・身もふたもない(笑)

 そうやってよく読んでみると、雑誌誌面で、地域のゲストハウススタッフがこう話していた。


 「よくメディアとかで取り上げるのって、移住なら移住、起業なら起業の美しい道なんだけど、その美しさに疲れるというか、

 その裏にはいろんなことがある。つらさとか限界とか起業の大変さとか暮らしとのバランスとか」


 もちろん、このゲストハウスも「美しく」紹介されているわけなんだけど、

 そういう言葉によって、ちょっとだけリアルを垣間見せるようにしている・・・のかもしれない。(推測)


 上記の本は、地域で活躍する「ローカルヒーロー」を紹介している本だけど、

 そのキラキラした「ローカルヒーロー」にこうも語らせている。


 「現在の地域おこしの主流は、若者が地方に入っていけば、いろいろといい流れができて、結果的に地域が元気になるのではないかといった希望的観測に依るところが大きい。

  でも、そんな楽観的なイメージだけでうまくいくとは思えません。」


 気づく人だけ気づく、くらいのわずかなリアルのかけらを混ぜつつ、

 裾野を広げるためにキラキラした面を取り上げる。

 たくさんの人に興味を持ってもらえるように仕向けていく。


 それはひょっとしたら、「関係人口」が「インディーズからメジャーデビューに挑戦」してみる時期だからなのかもしれない。

 「関係人口」は、たしかに数年前に比べて、耳にする機会は増えた。

 それでも今はまだ「インディーズで人気」なんだろうな、と思うこともある。


 わたしが平日の朝から夕方を過ごすあのオフィスで。

 仕事のことに限らず、わりとなんでもざっくばらんに話をするランチや飲み会の場で。

 「関係人口」という単語を聞いたことは、まだ一度もない。

 ついでに言うと「ローカル」も話題になることはない。


 インディーズからメジャーに移るとき、古参のファンは不安でいっぱいだと思う。

 遠くにいってしまったらどうしよう。

 新規のミーハーなファンがわらわら沸いて出て、ライブ会場が荒らされたらどうしよう。

 ゴールデンタイムの音楽番組でだっさいMCやらされてるのなんて見たくない。

 「売れ線」の曲を強いられて、彼らのやりたい音楽が出来なくなったらどうしよう。

 方向性の違い、スポンサーの意向・・・きっとハレーションもあちこちで起こる。


 うまくメジャーに適応できなくて、潰れてしまうアーティストもいっぱいいるんだと思う。

 けど、、、試練を乗り越えて、一回り大きくなりスターになることもできる。

 うまくメジャーデビューを乗り越えて欲しい。


 ・・・・なんの話。


 関係人口の話。


 職場の雑談の中で「先週末は、福井行って芝刈りしてましたー」と言っても

 「こいつ何言ってんの」と奇人変人を見る目で見られなくなったとき。

 「そういえば、〇〇部署の〇〇さんも地方行ってるんだって。長野らしいよ」と

 普通に返してくれる人が一人でも現れたとき。

 そのときは、きっと、世の中は何かが変わっているだろうし、

 たとえインパクトは小さいものだったとしても、きっと良い変化だと思う。

 少なくとも私にとっては。


 もともと、実現可能性の低い夢を見ることは、性分ではないけれど、

 言うだけ、見るだけはタダなので、今はそういう夢を見ていたいなあ・・と思う。


 そういう世界の実現のためには、メジャーデビューして「一般の人」にも広く認知していくことが必要な時期にさしかかっているのかもしれない。

 なんとなーく、2018年の今は、そう結論づけている。


 と、いうわけで「キラキラした”関係人口”」に対する違和感は解けたんだと思うけど、

 あとは「”関係人口になる”って変じゃない?”」という違和感ももうひとつ。

 ・・・長くなったので、それは別に書こう・・・

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