古代のロマンを味わえる小説三選。奈良中南和の魅力に浸かる。

のめりこむと、そこそこあぶない人になってしまう・・・という自覚はあるので、

詳しくおっかけてはいないのですが、

中学生時代、飛鳥で亀石と猿石を見て「こんなの人間が作ったの? 宇宙人・・?」と衝撃を受けてから

「人智を超えた」存在を感じると、なんだかとてもロマンを感じてしまう性分です。


仕事とかで理不尽なことがあって、怒り心頭のときは

「平安時代は、呪いで人を殺せましたからね・・」と

内心ぶつぶつ言う程度には、「目に見えない力」は信じてます。

(そこまで怒ることは、3年に1回くらいですけど・・・)


「現代の科学では解明できない、もの」への憧れ、とでも言いますか・・・

人間が全部をコントロールできるなんて、不遜な思い込み、という考えもベースにあるかもしれないけれど。


現代のSFみたいなものは、そんなに読まないんですけど、

飛鳥・奈良時代、はたまたそれより前の時代を描いていて、

そういった「人智を超えた」ものの存在をベースにした作品を読むことが好きで、

そういう作品に出会うと、とてもわくわくします。

更に奈良県内が舞台になっているものは、その場所を思い浮かべることが出来るので・・・萌えます。

ということで、独断と偏見で選んだ「萌える」3冊・・・(どれも小説です)

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『爆撃聖徳太子』町井登志夫

「聖徳太子は10人の意見を同時に聞くことができた、と言われている」は

今となっては後世の創作だった説が濃厚ですが、

この小説に出てくる太子は、聞こえます、聞こえてしまいます。


”普通”の人間なら、いっぺんに10人にも喋りかけられたら、うるさくてしょうがないはずで。

実際、ここに出てくる聖徳太子は

「うるさい、うるさい、うるさーーーーーい!!!」と頭をかきむしる、

「聞こえてしまう」のが鬱陶しくてしょうがなくて、人を避けて暮らしている。


斬新な人物像・・!と思ったのですが、

なるほど、その”普通”に、この解釈を加えたのか・・

そのスーパーマンっぷりは、ある意味「人智を超えた天才」だったのかも。

それなら「後に伝説となる聖徳太子像」が出来上がっても不思議ではないかも・・・


今、伝わっている「そんなわけあるかーい」とつっこみたくなる

数々の”伝承”にもある意味信ぴょう性さえ感じる。

妙に納得してしまいました。


当時の中国(隋)の様子、沖縄(琉球)の犠牲・・・

フィクションなのですが、ところどころ史実はもちろん混ざっていて、

「これ、本当に全部そうだったら面白いのに。いや、そうに違いない。信じることこそロマン・・・!」

とか思いながら、夢中になって読んでしまいました。




『風の王国』五木寛之

舞台は、主に”二上山”あたり。

小説に描かれた時代は、現代(昭和)ですが、古代からその地方で生き永らえていた部族に

まつわる「歴史ミステリー」とも言える作品です。

(古代よりも昭和に繋がる現代の歴史、のほうに重点は置かれていますが)


たまにふと「車がなかった時代って全部歩きだったんだよなあ・・どうしてたんだろ」と思うことがあるのですが、

ここに出てくるような民たちが”伝達”のプロ、として活躍していたのかもしれない・・・これまたロマン。


それを「鍛え抜かれた脚力」と解釈することは簡単なんだけど、

「”風の”王国」のタイトルが示す通り、自然(風)の力を体内に取り込むことが出来る

”人を超えた”能力の持ち主だったのだろう・・とか妄想しています。


これまた夢中になって読んだし、子どもの頃から身近だった「二上山」という山の見え方が変わった、

より一層、神聖な存在として見えるようになれた本です。



『まほろばの王たち』仁木英之

舞台は7世紀の奈良。”役小角”を軸に、飛鳥の宮の民と周囲の山々にする”神”たちのお話。

人間以外の登場人物がたくさん出てくるので、

上の2冊に比べて、さらにフィクション性は高いのですが、

なぜだろう・・・どうしてか、「当時はそれが”普通”だったのかも」と

まるで本当にあった物語を読んでいるような気分になっちゃうんですよね・・・。


そもそも伝承として、役小角は「鬼を使うことが出来た」と言われている。

現代の”普通”で考えれば、そんなことありえないのに、

あたりまえに”伝承”されている、この不思議。

流刑に処された伊豆大島から毎晩抜け出して富士山行ってたとか・・・ありえるはずはない。

けど、信じたくなってしまうというか、「きっとそうだったんだな」とするっと納得してしまう。

これがロマンの成せる技・・・。


この作品には、登場人物として、幼き頃の大海人(のちの天武天皇)と讃良(持統天皇)もいて。

役小角や山の神々との触れ合いが描かれているのを見ると、

壬申の乱以前にこの夫妻が吉野に下った理由に合点がいくなあ・・なんてことを

妄想するのもそれはそれは楽しいです。


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三冊ともとても面白くて好きな本。

どれも、読むことで、ますます「奈良」という土地に愛着を持たせてくれるし、

読んだ後、実際にその土地を訪れた時に感じる「ロマン・・・」。

萌えます。自分はたまらなく好きです。


奈良(特に中部より南部の方)に訪れる機会のある人は、是非、行く前に読んで欲しい・・!

そして、奈良に住んでいる人にも。

私自身、住んでいるときは、こういう歴史的なものに触れる機会ってあまり無かったし。


ちなみに、「まほろばの王たち」を読んでいるちょうどその日、

以前から気になっていた奈良県吉野のゲストハウスがイベントをやることを目にしました。

日程もちょうど私が奈良に行く予定のある週末。

よくよく見ると、その宿の場所は、

役小角が開祖したと言われている金峯山寺のすぐ近くではないですか・・・!

これは、吉野の山に呼ばれている・・と確信し、すぐに申し込むことにしました。


偶然、と言ってしまえばそれまでだけど、

これも何か人の力を超えたところでの「お導き」かもな~なんて思いながら、

今からその日をわくわく待っています。

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