「シェア本屋のシェア店主」本屋さん体験をした2年の思い出

複数人数の「シェア店主」で家賃と棚と店番をシェアする「シェア本屋」。

千葉県松戸市にある「せんぱくBookbase」というシェア本屋で、

オープン時の2018年からシェア店主として参加させてもらっていましたが、

この3月で辞めました。

(こういう時「卒業」って単語を使いたくなったりもするんですけど、

 なんかちょっと自分にはくすぐったいな、と・・・)


3月まで、というのは1,2か月前には決めていたので、

最終月は何かしたいな、イベントとか売り尽くしとか色々やれるかな、と考えていたのですが、まさかの「外出自粛」時期。

最終日の3月28日は「一応シャッターだけは開けてます」とひっそり告知にとどめました。


何が起こるかわからないもんですね・・・

日々を大事にしないといけないんだな、とますます思います。


感想も「騒ぎが落ち着いた頃にゆっくりまとめようかな」とも思ったのですが、

記憶というのは一分一秒経つごとに薄れていくし、今、思っていることを記しておこうと思いました。

(そして今は出歩かない分、むしろ、自分は落ち着いている・・・)


「シェア本屋の立ち上げと、シェア店主」の募集をtwitterで偶然知ったのは2018年の3月。

「活用を模索していた空き家・・・”ブックセンター”はどうだろう」と知人と話し始めたのはそのほんの数週間前で。

「本を扱う仕事なんてしたことないし、ここで色々勉強できるかも・・?」と

運命的な出会いを感じ、思い切って応募してみたことが始まりでした。


本の世界は奥深くて奥深くて・・・!

本業のサラリーマン仕事の傍ら、月2回のお店番ではまだまだ「かじった」とさえ言えないくらいのレベル、と自覚しています。

まだまだまだまだ勉強したいことも知りたいこともたくさんある。


でも、そろそろ辞める時期なんだろうな、と思っていたのは、

元々始めたきっかけである空き家での活動に割く時間がなかなか取れないことにもどかしさを感じ始めたから、です。

やる気は無限に持てても、時間は有限。

シェア店主の活動を通じて学んだ一つ一つを「奈良でやるとしたらどうやろう」と思うことが増えるにつれ、

それを考えたり、実行したりする時間をもっと増やしたくなりました。

なので「2019年度末」を一つの区切りとしました。


約2年間の感想を一言で言うと、

とーーーーーーーーーーーーーーーーーーっても貴重な経験でした!ということに、尽きます。


◆未知なる「仕事」「働き方」との出会い

 私は新卒から会社員。「ザ・会社員」でオフィスに月~金で出勤しデスクで仕事するような働き方をしています。

 一方、店長を始めとして同じシェア店主の職業は十人十色。

 会社員、フリーランス、公務員・・・

 書店員の方もいらっしゃったし、色んな方と出会えました。


 また、この「せんぱくBookbase」というお店は、「せんぱく工舎」という「シェアアトリエ」の中にあり。

 建物の中に入居されているカフェ、デザイン事務所、レストラン、、などなど、

 日頃の仕事ではなかなか出会えない業種・職種の方々と出会うことが出来ました。

 また店長やお店の繋がりで、何人もの本屋さんに出会うことも出来たのもとても刺激的でした。

 

 それぞれの方々と仕事の話をがっつりすることは無かったけど、

 やる前は考えられないくらい視野が広がりました。

 (とにかく出会った方一人ひとりに感謝していて、御礼をお伝えしたい・・!)


 日ごろ、自分が会社の中で当たり前だと思っていることは当たり前ではない。

 頭では当然分かっていたつもりでしたが、実際にやってみて体感したことはいちいち新鮮でした。

 イチからお店を立ち上げた時期、ということもあり、

 一つ一つが決まっていく、動いていく、、いう状況を近くで見れて、

 こんな風に動いていく世界もあるんだなあ、と、驚いたり感心したりで飽きることのない日々でした。

 

 多種多様な働き方を知る、ということは自分が働く、仕事する、ひいては生きるうえでの大きな財産になりました。


 [参考]

  ご縁があって「副業」に関するインタビューも受けさせてもらいました。

  ここで「副業活動としてのシェア本屋」の醍醐味を記事にしてもらえたのも、とても良い思い出です。


◆「自分」との出会い

 職業も価値観のバラバラな複数人で運営していたシェア本屋。

 (ちなみに住んでいる場所もバラバラなので、比較的、オンラインでのコミュニケーションを軸に運営していました)

 当然、一人ひとりの考え方や意見も違いました。

 

 どこがどう違って、どうすり合わせていったのか・・までを書くと長くなるので、割愛しますが(笑)

 自分とは違う意見を聞いた時、「何で?」という話をした時、

 「そうか、自分はここがこだわりたいポイントなんだな」ということ、

 逆に「ここは特にこだわってない、どっちでもいいな」と感じること、が朧気ながらも考えるきっかけになりました。

 「本」に関すること、お店づくりに関すること、チーム運営に関すること・・・

 

 今までの自分の経験から形作られている価値観、って知らず知らずに自分にこびりついているもので。

 例えば、自分は実家が個人商店生まれ、バイトも接客が多かった+現在の仕事柄で

 「お客さんに不快な思いをさせないか」をわりと気にしてしまうんだなあ、と感じたり。

 (ちゃんと自分がそれができていたかは別ですが・・・^^;)


 会社員で働くということは(少なくとも自社は)「チームで働くこと」が多くて、

 その視点が強く出てしまうこともあったように思います。

 良し悪し、ではないし、変えたい変えたくない、では、ないけども。

 そうやって色々な意見を見聞きすることで、

 「もし自分がブックセンターをやれるようになったら、ここはこだわりたいな」という

 夢を膨らませることができたのも(笑)、楽しい経験でした。

 

◆「本」との出会い

 これは本当に本当に醍醐味だったな、と思います。

 本を読むことが好き・・と言ったって、その道のプロ?として働いたこともないし、

 たかが一会社員、知ってる本は限られているし、

 一人の人間の「好み」なんてどうしても偏ってしまうところがあると思うんですけど。

 複数人のシェア店主がそれぞれに棚に自分の好きな本を並べるスタイルだと、

 「へ~、こんな本があるんだ!」というわくわくした気分で、毎回、棚を眺めていました。

 店番は月に2回でしたが、お店に行くのが楽しみだった理由の一つです。


 シェア店主同士に限らず、お客さんや、その他イベントで知り合った方々も・・・

 「こんな本があってね」「これが好きで」なんて話を聞く機会に恵まれる。

 これは「シェア店主」をやったからこそだと思っています。


 世の中にはこんなにも魅力的な本がたくさんあって、

 まだまだまだそれを読める喜びにこれから出会えることが出来るのだな、と思います。

 シェア店主をやっている中で少しだけ気をつけていたことがありました。

 それは始めて半年が経った頃に、シェア店主仲間とトークイベントに出させてもらった時にお客さんから聞かれたことで。

 「シェア本屋を始めて、本を読む量は増えましたか、減りましたか。

  自分は古本屋が好きなんですけど、最近、古本屋さんに行ってもお店の方が本じゃなくて画面を見ていることが多くて淋しいんです」と。

 私は幸い(?)「増えました。お店番の時とか読んでます」と即答出来たのできたのですが、

 その感覚を大事にしたい、と思いました。

 「本好きな人が本を読みながら店に立っている」

 自分の店番の時は、そういうイメージにしたいなあ・・と思ったことを覚えています。

 2年間のお店番を経て、素敵な本にたくさん出会えたことは本当に嬉しかったです。


シェア本屋のシェア店主。

月々7千円の棚賃で2回のお店番。

「仕事、というより、半分はスクールのようなもの」と、自分自身はとらえて活動していました。


上記に書いたようないくつもの「出会い」のほかにも

一箱古本市に自分が「出店」すること、ちょっとした小さいイベントやワークショップを自分で作ること、

本を仕入れて売るという「本屋っぽい」こと・・・

やる前だとまったく想像できなかったことができるようになった。


「本屋さん」として自分が世の中に存在している瞬間がある、という感覚は

とても不思議で得難い経験だったと思います。貴重でした。


3月で辞めて「さあ、4月からは奈良の活動に・・!」という目論見は今のところ崩れ去ってはいますが(笑)

ここで学んだ本との出会いを大切にして、今はしばらく本を単純に楽しむ生活をしていこうかな、と思っています。


長々と(さして笑いもオチもない文章ですいません)にお付き合い頂いてありがとうございました。

いったんの区切として、つらつらと書きました。

関わって頂いた方々、たくさんの学びをくださった皆様、本当にありがとうございましたー!

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